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海月(ちいさなお話)

2006/09/22(Fri) 20:24
kurage



「くらげになりたい」

彼女のその言葉のあまりの唐突さに、俺は、思わず、まじまじと彼女をみた。
「なによ。」
少し拗ねたように俺を見上げた。

「いや」
俺は笑って、彼女にそっと、キスをした。

夕陽が海に落ちようとしていた。
夕陽の海を彼女と見るなんて、あまりに、出来すぎたシチュエーションに、俺は内心ひとしきり照れていた。
なんだか、人ごみの中で、知らない間に夜のネオンの中にいるっていうほうが、落ち着く気がして。

彼女が言い出したんだった。
「海、見に行こう」
「げ。」
俺は、露骨に嫌な顔をしたと思う。
「冬の海なんて、酔狂な奴か、恋愛がはじめてーって、もてない奴が行くとこだよ。」
彼女は、ふと笑った。
「なんだよ。」
「あたし、たぶん、それ。酔狂で、恋愛がはじめてーって、もてない奴。」
もてなくないだろ、俺は心の中でつぶやいた。

とりあえず、今日の彼女は変だった。
だから、俺は、言うことを聞くことにした。

夕陽は、本当にまるで燃えるように、静かに水面を染めていった。

「くらげはね、海の色に染まるの。」
「透明だからな。」
「うん。だから、こんなときは、海の中で、空の色に染まるの。」

桃色に染まる海月が、ゆらゆらと揺れている姿が、目に浮かんだ。

「空と海はね、恋してるの。」

やっぱ、今日の彼女は変だ。

「太陽が沈んだ瞬間に、海はもっともっと燃える。沈んだときからが夕焼けって綺麗なのよ、知ってた?恋しくて、燃えるの。」

とくん。俺の中で、何かが音をたてた。沈んだあとで、確かに、海は、燃え出していた。

「お前は、海じゃないのか?」

彼女は、また、俺を睨んだ。知ってるくせに・・・と。

「いいの、あたしは、海月で。」


俺は、ポケットの上から思わず指輪をさわった。
会う前に薬指から外した指輪。


海は、だんだんと暗く夜の闇に吸い込まれていく。

俺は、やっぱり、なんだか居心地悪く、それでも静かに彼女のとなりに立っていた。
細い肩が闇に溶け出しそうで、彼女の肩をしっかりと抱きながら。


俺にも、なんだか、彼女の変が伝染してきたみただった。





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